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下山 巖; 馬場 祐治
DV-X研究協会会報, 28(1&2), p.62 - 69, 2016/03
触媒として注目されているリンドープグラファイトに対しドーパントの効果を調べるため、吸収端近傍X線吸収微細構造(NEXAFS)分光法によりPサイトの電子構造を調べた。70Cの高温ドーピングで作製した試料のP K端NEXAFSスペクトルにはグラファイト的な偏光依存性が観測され、リンサイトが平面構造をとることを明らかにした。配位数の異なる複数の平面リンサイトのモデルクラスターについてDVX法による電子構造解析を行い、NEXAFSスペクトルと比較したところ、炭素3配位の平面構造を持つグラファイト構造のPサイトがNEXAFSスペクトルを最もよく再現することがわかった。一方、室温ドーピングと800Cのアニーリングにより作製した試料では偏光依存性の低下が観測された。5員環を含んだ曲面構造のPサイトをもつモデルクラスターの電子構造計算により、NEXAFSの偏光依存性の低下とスペクトル形状の変化を説明できることがわかった。この結果はイオンドーピング時の温度によりリンサイトの局所構造を制御できることを示している。
下山 巖; 馬場 祐治; 関口 哲弘
DV-X研究協会会報, 27(1&2), p.34 - 44, 2015/03
共役系ホウ素窒化炭素化合物(BCN)は触媒活性などの機能性が注目を集めている。しかし、その原子配置は不明である。我々はNEXAFS分光法のN吸収端でのスペクトルをDVX法で解析し、原子配置に関する分極ルールを提案した。本発表ではB吸収端でのスペクトルから分極ルールを再検討した結果について報告する。BCNのB及びNのNEXAFSスペクトルは六方晶窒化ホウ素(h-BN)のNEXAFSスペクトルのピークよりも低エネルギー側にブロードな成分を示し、偏光依存性解析からそれらの成分は面外遷移に帰属される。グラファイト構造BCNについて原子配置の異なる幾つかのモデルクラスターの準位の電子状態をDVX法により計算した。BC2NはB, Nどちらの内殻励起においてもh-BNよりも低い励起エネルギー領域に準位を示した。B, C, N間で大きい分極をもつ原子配置の場合はB吸収端において大きいピーク強度を示すが、B, C, N間の分極が小さい原子配置の場合は逆の傾向を示すことから、B吸収端のNEXAFSスペクトルの結果も分極ルールの存在を支持することがわかった。
下山 巖
DV-X研究協会会報, 24(1&2), p.7 - 11, 2012/03
共役系B-C-N固体材料は水素吸蔵と触媒への応用が期待されている。われわれは放射光X線吸収分光を用い、水素原子の吸着特性と触媒活性中心の構造について調べた。(1)窒化ホウ素(BN)には炭素同素体の類似構造が存在し、BNナノ構造は水素吸蔵材料の候補である。われわれはBN薄膜を用いて水素原子吸着による電子構造変化をNEXAFSにより調べた。結果をDVX計算により解析し、B吸収端でのNEXAFSの変化がh-BNのc面に垂直に吸着した水素原子に起因したものであると結論した。この結果はBN材料への水素原子の吸着がBサイトへの選択的吸着特性を持つということを示した。(2)Nドープ炭素電極は酸素還元反応(ORR)触媒活性を示す。われわれはNドープグラファイトのNEXAFSを測定し、電気化学実験により得られた還元電位とNEXAFSとの関係について調べた。還元電位は歪んだ立体配置を示す試料の方で大きい値を示し、立体配置の違いが触媒活性に影響することを明らかにした。モデルクラスターを用いたDVX計算により、曲面構造を持つフラーレンライク構造がドーパン平面構造を持つNサイトよりもORR活性に寄与する可能性について指摘した。